Banteay Srei : クメールの至宝
 訪問日

 09Feb2003、17Dec2006

 創建者

 Rajendravarman 2nd、Jayavarman 5th
 創建年代  A.D. 967
 建築様式  Banteay Srei Style
 宗教  Hindu


この遺跡は、Siem Reapから北東へ約40kmの位置、アンコールの中心から離れた場所にある。

近代になって名付けられたBanteay Sreiと言う名は、「美しい女の砦」と言う意味らしい。

また、この遺跡は、アンコールの王が建立した寺院ではなく、ジャヤバルマン5世の摂政となった王師ヤジュニャヴァラーハが建立した。

赤砂岩でできた小さな遺跡だが、レリーフは目を見張るほど美しく、最高の美術装飾を施された遺跡として見る事ができる。

今は第3周壁より中に入る事が禁止されており、近くで見れないのが残念である。




最初の東塔門。


















東塔門の破風には、3頭の象に乗るインドラ神が。
































東塔門を抜けると、参道がある。



















参道途中の南側の建物の破風。
その破風には、聖牛ナンディンに乗るシヴァ神とウマー
のレリーフがある。


















その拡大写真。
ウマーの顔は削り取られている。

























参道横(北側)にあった破風。
ラーマヤナ物語の魔王ラーヴァナが、ラーマ王子の妻シータ姫を誘拐する場面。
























参道を進むと、第一周壁の東門がある。
その東門の扉石には、サンスクリット文字の碑文がある。





















その門を入った南側地面には、聖鳥ハンサに乗ったブラフマー神のまぐさ石があった。




















そのまぐさ石の横にあった破風の一部。
この象の鼻を持つ架空動物は、マカラ。























第一周壁の東門を入る。
更に参道が続いている。
参道の両側、祠堂群を囲むように環濠がある。

















第一周壁内の南東隅から遺跡を見る。
ガイドさんから、ここで写真を撮ると、祠堂群が池に映って、いい写真が撮れると勧めてくれた。

みんな、ここで写真を撮っていた。
















同様に北東隅から、写真を撮る。



















参道を進むと、第2周壁の東門の東側の破風。




















第2周壁の東門を入ったすぐ内側の破風。
ヴィシュヌ神の神妃ラクシュミーが、両側の象に水を掛けてもらい身を清めている。

神妃ラクシュミーの顔だけを見ても、女性かどうか見分けが難しいが、胸の2つの膨らみで、女性とわかる。
















この門の内部には、ヨニがあった。























第2周壁の門を出ると、すぐに第3周壁の東門がある。
その門の東側には踊るシヴァ神の破風がある。



















その東門から祠堂の前殿の東側破風を見る。
3つ頭の象アイラーヴァタに乗るインドラ神のレリーフがある。
インドラ神は、片足立てて左手の手の平を正面に向けている。

まぐさ石は、3頭のシンハ。




















精緻なレリーフが残っている。






















北側経蔵の東側破風(下写真)には、火神アグニが、カンダヴァの森に住むナーガのタクサカを殺す為に起こした火事を消す為に、3つ頭の象アイラーヴァタに乗るインドラ神(上部中央)が、雨を降らせる。
下段には、森の中で、動物、人間達が、雨を避けながら動揺している。その森の左右では、クリシュナと、その兄のバララーマが、雨が降りすぎないように矢を射ている。
中断の斜線は、雨の表現に見えるが、実際は矢を表現しているらしい?
(マイケル・フリーマン著「遥かなるアンコール」(RIVER BOOKS)による。)






































その北側経蔵の東側の偽扉。
























北側経蔵を北西から見る。
























北側経蔵の西側の破風。

邪悪なカンサは、ヤドゥ族の王と結婚した自分の妹の8番目の息子に殺されると予言を受ける。
カンサは、自分の妹を殺そうとしたが、王から生まれてくる子供を殺してもよいと言う約束をし、妹を殺す事を思い止まらせた。
そして8番目の子供が生まれた時、王は牛飼い村の子供とすり替えた。
その子供は、クリシュナと名付けられ育つ。
クリシュナの出生の秘密を知ったカンサ王は、彼を殺そうとするが、果たせず、最後には、クリシュナに殺されてしまう。

この破風は、クリシュナがカンサ王を註殺する
場面。





















破風のコーナーのシンハ。
ゴジラのようにも見える。























右端は、北側経蔵で、正面は北祠堂。

この遺跡には、3基の祠堂があり、中央と南祠堂は、
シヴァ神、北祠堂は、ヴィシュヌ神が祀られている。



















これは、北祠堂の北側のまぐさ石。
双胴の悪魔を殺すクリシュナらしい。
クリシュナは、ヴィシュヌ神の化身である。

と書いたけど、違っているように思う。
インドの叙事詩「マハーバーラタ」の一場面で、パーンダヴァ5兄弟の一人、怪力の持ち主ビーマが邪悪なドゥシャサーナを2つに切り裂いている場面と思う。

参考:
以下のように右のまぐさ石の解釈は、本によって様々で、興味深い。
@Michael Freeman, Claude Jacques著、Fimiko Boughey訳の
「遥かなるアンコール」によると、双胴の悪魔を殺すクリシュナ
AVittorio Roveda著「Images of the Gods」によると、
「マハーバーラタ」のパーンダヴァ5兄弟の一人、怪力の持ち主
ビーマが邪悪なドゥシャサーナを2つに切り裂いている場面
B高杉 等著「東南アジアの遺跡を歩く」によると、阿修羅を
引き裂くヴィシュヌ神








第3周壁の西門から中央祠堂を見る。























中央祠堂の西面のデヴァダー。
アンドレ・マルローの盗掘事件で有名になり、東洋のモナリザとも呼ばれている。

















中央祠堂の西面の南側のデヴァダー。
























中央祠堂の西面の北側のデヴァダー。

















































第2周壁の西門の内側の破風。
これは、ラーマヤナ物語の一場面。

猿のスグリーヴァは、兄猿のヴァーリンに王位と妻を
奪い取られた。ラーマ王子は、シータ妃を探し出す手助けと引き換えに、スグリーヴァに加勢する。
猿王のヴァーリンと、スグリーヴァの闘いの場面。
ラーマ王子(右端)が放った矢が、ヴァーリンを射殺してしまう。












その破風の下のまぐさ石。




















3基の祠堂を、南西から見る。




















南祠堂の南面の破風とまぐさ石。
破風、まぐさ石の両方に、死と裁判を司るヤマ神がいる。
ヤマは、南の方位神でもある。























南側経蔵の西側の破風。
























その破風の拡大写真。

中央は、カイラーサ山で瞑想するシヴァ神。
ヒマラヤ王は、娘ウマー(左のひざまづいている女性)にシヴァの身の回りの世話を指示する。
そして、シヴァのウマーに対する恋情をかきたてる為に、インドラ神が愛神カーマを派遣。
愛神カーマが、恋の矢をシヴァに向けて射ようとした時(シヴァの左側)、シヴァに見つかってしまい、シヴァの第3眼が火焔を発し、カーマは灰と化してしまう。
カーマの妻ラティは、嘆き悲しみ、火の中に飛び込んで、夫の後を追おうとした。
その時、空から声が聞こえ、シヴァがウマーと結婚した時、再び、カーマは姿を取り戻し、夫と再会する事ができようとお告げがあった。











南側経蔵の東側の破風。



















その拡大写真。

上部中央は、カイラーサ山で瞑想するシヴァ神。
膝の上には、妻のウマー。
下段には、魔王ラーヴァナが、カイラーサ山を揺すって、瞑想の邪魔をしている。
シンハとか動物達の怖がっているしぐさが面白い。



























経蔵の破風のコーナーのシンハ。
























参道を引き返す途中、
ナンディンに乗るシヴァ神と
ウマーの破風があった建物の反対側(北側)の建物の破風。

ヴィシュヌ神の化身、ナラシンハ(半人半獅子)が、魔王ヒラニヤカシプを殺す場面。

魔王ヒラニヤカシプは、兄弟のヒラニヤークシャが、イノシシに化身したヴィシュヌ神に殺された事を恨み、復讐を誓った。

そして、無敵になる為に、
マンダラ山の洞窟で苦行に励む。その苦行によって生じた火焔により世界中が苦しんだ。
そこで、その苦行を止めさせる為に、ブラフマー神は、魔王ヒラニヤカシプの望みを叶えてやる。
その望みは、「いかなる武器、人間、獣、神々、アスラ、大蛇によって殺される事が無いように。」







その後、魔王ヒラニヤカシプの4人の息子のひとり、プラフラーダは、敬虔なヴィシュヌ信者で、ヒラニヤカシプは、殺そうとしたが、全て失敗に終わる。怒ったヒラニヤカシプは、自ら剣をとり殺そうとして、拳で柱を叩いた時、ナラシンハの姿をしたヴィシュヌ神が出現する。ヴィシュヌ神は、人間でも獣でもない姿のナラシンハとなり、ヒラニヤカシプを鋭い爪で引き裂いてしまう。

と言う話であるが、この破風を見ると、神が阿修羅にやられている場面と勘違いしてしまう。







破風の端には、ナーガの口から、象の鼻を持つマカラが出現している。


















 

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