この遺跡は、Siem Reapから北東へ約40kmの位置、アンコールの中心から離れた場所にあります。
近代になって名付けられたBanteay Sreiと言う名は、「美しい女の砦」と言う意味と言う事です。
また、この遺跡は、アンコールの王が建立した寺院ではなく、
ジャヤバルマン5世の摂政となった王師ヤジュニャヴァラーハが建立しました。
赤砂岩でできた小さな遺跡ですが、レリーフは目を見張るほど美しく、
最高の美術装飾を施された遺跡として見る事ができます。
今は第3周壁より中に入る事が禁止されており、近くで見れないのが残念です。
最初の東塔門です。
東塔門の破風には、
3頭の象に乗るインドラ神が描かれています。
東塔門を抜けると、参道があります。
参道途中の南側の建物の破風です。
その破風には、
聖牛ナンディンに乗るシヴァ神とウマー
のレリーフがあります。
その拡大写真です。
ウマーの顔は削り取られています。
参道横(北側)にあった破風です。
ラーマヤナ物語の
魔王ラーヴァナが、
ラーマ王子の妻シータ姫を
誘拐する場面です。
参道を進むと、第一周壁の東門があります。
その東門の扉石には、サンスクリット文字の碑文があります。
その門を入った南側地面には、聖鳥ハンサに乗ったブラフマー神のまぐさ石がありました。
そのまぐさ石の横にあった破風の一部です。
この象の鼻を持つ架空動物は、マカラです。
第一周壁の東門を入ります。
更に参道が続いています。
参道の両側、祠堂群を囲むように環濠があります。
第一周壁内の南東隅から遺跡を見たところ。
ガイドさんから、ここで写真を撮ると、
祠堂群が池に映って、いい写真が撮れると
勧めてくれました。
みんな、ここで写真を撮っていました。
同様に北東隅から、写真を撮ります。
参道を進み、
第2周壁の東門の東側の破風を見たところ。
第2周壁の東門を入ったすぐ内側の破風です。
ヴィシュヌ神の神妃ラクシュミーが、
両側の象に水を掛けてもらい身を清めています。
神妃ラクシュミーの顔を見ただけでは、
女性かどうか見分けが難しいですが、
胸の2つの膨らみで、女性とわかります。
この門の内部には、ヨニがありました。
第2周壁の門を出ると、
すぐに第3周壁の東門があります。
その門の東側には、
踊るシヴァ神
の破風があります。
その東門から祠堂の前殿の東側破風を見たところ。
3つ頭の象アイラーヴァタに乗るインドラ神のレリーフが
あります。
インドラ神は、片足立てて左手の手の平を正面に向けています。
まぐさ石は、3頭のシンハです。
精緻なレリーフが残っています。
北側経蔵の東側破風(下写真)には、
火神アグニが、カンダヴァの森に住むナーガのタクサカを殺す為に起こした
火事を消す為に、3つ頭の象アイラーヴァタに乗るインドラ神(上部中央)が、雨を降らせます。
下段には、森の中で、動物、人間達が、雨を避けながら動揺しています。
その森の左右では、クリシュナと、その兄のバララーマが、雨が降りすぎないように矢を射ています。
中段の斜線は、雨の表現に見えますが、実際は矢を表現しているようです?
(マイケル・フリーマン著「遥かなるアンコール」(RIVER BOOKS)による。)
その北側経蔵の東側の偽扉です。
北側経蔵を北西から見たところ。
北側経蔵の西側の破風です。
邪悪なカンサ王は、
ヤドゥ族の王と結婚した自分の妹の
8番目の息子に殺されると予言を受けます。
カンサ王は、自分の妹を殺そうとしましたが、
ヤドゥ族の王は、生まれてくる子供を殺してもよい
と言う約束をし、
妹を殺す事を思い止まらせました。
そして8番目の子供が生まれた時、
ヤドゥ族の王は牛飼い村の子供とすり替えました。
その子供は、クリシュナと名付けられ育ちます。
クリシュナの出生の秘密を知ったカンサ王は、
彼を殺そうとしますが、果たせず、
最後には、クリシュナに殺されてしまいます。
この破風は、
クリシュナがカンサ王を註殺する場面です。
破風のコーナーのシンハです。
ゴジラのようにも見えます。
右端は、北側経蔵で、正面は北祠堂です。
この遺跡には、3基の祠堂があり、
中央と南祠堂は、シヴァ神、
北祠堂は、ヴィシュヌ神が祀られています。
これは、北祠堂の北側のまぐさ石です。
双胴の悪魔を殺すクリシュナのようです。
クリシュナは、ヴィシュヌ神の化身です。
と書きましたが、違っているように思います。
インドの叙事詩「マハーバーラタ」の一場面で、
パーンダヴァ5兄弟の一人、怪力の持ち主ビーマが
邪悪なドゥシャサーナを2つに切り裂いている場面と
思います。
参考:
以下のように右のまぐさ石の解釈は、
本によって様々で、興味深い。
①Michael Freeman, Claude Jacques著、Fimiko Boughey訳の
「遥かなるアンコール」によると、双胴の悪魔を殺すクリシュナ
②Vittorio Roveda著「Images of the Gods」によると、
「マハーバーラタ」のパーンダヴァ5兄弟の一人、怪力の持ち主
ビーマが邪悪なドゥシャサーナを2つに切り裂いている場面
③高杉 等著「東南アジアの遺跡を歩く」によると、
阿修羅を引き裂くヴィシュヌ神
第3周壁の西門から中央祠堂を見たところ。
中央祠堂の西面のデヴァダーです。
アンドレ・マルローの盗掘事件で有名になり、
東洋のモナリザとも呼ばれています。
中央祠堂の西面の南側のデヴァダーです。
中央祠堂の西面の北側のデヴァダーです。
第2周壁の西門の内側の破風です。
これは、ラーマヤナ物語の一場面です。
猿のスグリーヴァは、兄猿のヴァーリンに
王位と妻を奪い取られました。
ラーマ王子は、シータ妃を探し出す手助けと引き換えに、
スグリーヴァに加勢します。
その猿王のヴァーリンと、スグリーヴァの
闘いの場面です。
ラーマ王子(右端)が放った矢が、
ヴァーリンを射殺します。
その破風の下のまぐさ石です。
3基の祠堂を、南西から見たところ。
南祠堂の南面の破風とまぐさ石です。
破風、まぐさ石の両方に、
死と裁判を司るヤマ神がいます。
ヤマは、南の方位神でもあります。
南側経蔵の西側の破風です。
その破風の拡大写真です。
中央は、カイラーサ山で瞑想するシヴァ神です。
ヒマラヤ王は、
娘ウマー(左のひざまづいている女性)に
シヴァの身の回りの世話を指示します。
そして、シヴァのウマーに対する恋情を
かきたてる為に、
インドラ神が愛神カーマを派遣します。
愛神カーマ(シヴァの右側)が、
恋の矢をシヴァに向けて射ようとした時、
シヴァに見つかってしまい、
シヴァの第3眼が火焔を発し、
カーマは灰と化してしまいます。
カーマの妻ラティは、嘆き悲しみ、
火の中に飛び込んで、夫の後を追おうとします。
その時、空から声が聞こえ、シヴァがウマーと結婚した時、再び、カーマは姿を取り戻し、
夫と再会する事ができようとお告げがありました。
南側経蔵の東側の破風です。
その拡大写真です。
上部中央は、
カイラーサ山で瞑想するシヴァ神です。
膝の上には、妻のウマーがいます。
下段には、
魔王ラーヴァナが、カイラーサ山を揺すって、
瞑想の邪魔をしています。
シンハとか動物達の怖がっているしぐさが
面白い。
経蔵の破風のコーナーのシンハです。
参道を引き返す途中、
ナンディンに乗る
シヴァ神とウマーの破風があった
建物の反対側(北側)の建物の
破風です。
ヴィシュヌ神の化身、
ナラシンハ(半人半獅子)が、
魔王ヒラニヤカシプを殺す
場面です。
魔王ヒラニヤカシプは、
兄弟のヒラニヤークシャが、
イノシシに化身したヴィシュヌ神に
殺された事を恨み、
復讐を誓いました。
そして、無敵になる為に、
マンダラ山の洞窟で苦行に励みます。
その苦行によって生じた火焔により世界中が苦しみました。
そこで、その苦行を止めさせる為に、ブラフマー神は、魔王ヒラニヤカシプの望みを叶えてやります。
その望みは、「いかなる武器、人間、獣、神々、アスラ、大蛇によって殺される事が無いように。」です。
その後、魔王ヒラニヤカシプの4人の息子のひとり、そして、敬虔なヴィシュヌ信者のプラフラーダを、
ヒラニヤカシプは、殺そうとしましたが、全て失敗に終わります。
怒ったヒラニヤカシプは、自ら剣をとり殺そうとして、拳で柱を叩いた時、
ナラシンハの姿をしたヴィシュヌ神が出現します。
ヴィシュヌ神は、人間でも獣でもない姿のナラシンハとなり、
ヒラニヤカシプを鋭い爪で引き裂いてしまいます。
と言う話ですが、この破風を見ると、神が阿修羅にやられている場面と勘違いしてしまいます。
破風の端には、
ナーガの口から、象の鼻を持つマカラが出現して
います。