シンハと闘うクリシュナ

 
クリシュナは、ヴィシュヌ神の化身である。

ヤドゥ族の王の息子ヴァスディーヴァは、ウグラセーナ王の娘デーヴァキーと結婚し、デーヴァキーの兄のカンサが御者をする馬車に乗って都に帰る途中、何者とも知れぬ声がカンサに話しかけた。

「無知なる者よ。デーヴァキーの第八番目の息子が汝を殺すと言うのに。」

この声を聞いたカンサは、デーヴァキーを殺そうとするが、ヴァスディーヴァは、それを止め、生まれてくる息子をすべて殺してもよいと
約束した。
そして、自分の父ウグラセーナや、ヤドゥ族の王を退け、カンサはシューラセーナ国の王となった。

ヴィシュヌ神は、自ら第八番目の息子としてデーヴァキーの胎内へ入り、ある夜デーヴァキーの胎内より出現した。
ヴァースデーヴァは、自分の息子を抱き、ゴークラの牛飼村へ行き、ナンダの妻の娘とすり替えた。

その息子がクリシュナであり、カンサに知られる事になり、命を狙われる事になる。
羅刹女プータナーや、悪魔トリーナヴァルタ、悪魔ケーシンが化けた馬、象のクヴァラヤーピーダー、チャヌラーとムシュティカと言う強大なレスラーが、クリシュナを殺そうとするが、逆に殺されてしまう。

そして、最後には、邪悪な王のカンサは、クリシュナに殺されてしまう。

しかし、原話の中には、シンハによって、命を狙われる話は出て来ない。
クメールの遺跡のレリーフの中には、原話に無い動物達と闘うシーンが、よく描かれている。
(と言っても伝聞形式の神話は、話が誇張されたり、内容が変わったりで、何が原話かか分からないけどね1)

クリシュナの強さを象徴する為に、描かれたものと推測する。





 遺跡: Preah Vihear(Khao Phra Viharn) / Gambodia


第3塔門の北正面入口上部にある破風のレリーフです。

中央にクリシュナで、右手に象の鼻をつかみ、左手にシンハの後ろ足をつかんでいる。

カンサ王は、クリシュナによって殺される事を恐れ、競技場をつくり、レスリングにことよせて、クリシュナを殺す事を命じた。
そして、象使いには、象のクヴァラヤーピーダーを競技場の入り口に待たせ、クリシュナを襲撃する事を命じた。

このレリーフは、その象のクヴァラヤーピーダーと思うが、原話にはシンハは出て来ない。


クリシュナの強さを象徴する為に、象のクヴァラヤーピーダー、及び、シンハと闘っている絵が描かれたのであろう。





 遺跡:  Phra That Narai Chengweng / Sakon Nakhon




祠堂の東入口から入ったところにあるまぐさ石です。

中央にクリシュナ、両手にシンハの後足をつかんでいる。
後ろ足をつかまれたシンハは、頭が真上を向いており、口から花綱を吐き出している。



祠堂北側の入口上部のまぐさ石のレリーフです。

中央上部にクリシュナ、そして、シンハの後ろ足をつかみ、闘っている場面が描かれている。


原話には、シンハとの闘いは出て来ないので、以上2つのまぐさ石は、クリシュナの強さを象徴する場面として
描かれたのであろう。





 遺跡:  Phanom Rung / Burirum


このレリーフは、祠堂の東側にあるMandapaの北入口の東側の半破風である。

左がクリシュナ、右の後ろ足立ったシンハと闘っている。




Mandapaと祠堂の間をつなぐAntaralaの北面入口上部のまぐさ石です。

中央のクリシュナが、左右のシンハの後ろ足をつかみ、足を胴体に絡ませ、闘っている。

原話に、クリシュナとシンハの闘いの場面はなく、強さと勇敢さを示す為に描かれたものと思う。
 




 遺跡:  Prasat Phimai / Nakhon Ratchasima



このまぐさ石は、Phimai遺跡で発掘された物であり、現在は、Phimai National Museum へ収蔵されている。

まぐさ石の右側が破損し無くなっており、まぐさ石の本来の中央、このまぐさ石の右よりに。クリシュナが描かれており、
両手で、シンハの両足をつかんで、組み据えている。
シンハのお尻は、ボールのように真ん丸に描かれており、面白い。

クリシュナが闘った動物として、原話にはシンハは出て来ないので、クリシュナの強さを表す為に描かれたものと
想像する。






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